資本主義社会をロジックで考える
フランスの経済学者であるトマ・ピケティ氏が2013年に書いた「21世紀の資本」という本は現在までに多くの言語に翻訳され、世界数十ヵ国で累計160万部以上の売り上げを記録しました。
この本の主張は「資本主義社会の限界」についてなのですが、結論はとてもシンプルです。
① 金持ちはどんどん金持ちになり、貧乏人は貧乏人のままである。
② 過去も現在も①の状況は資本主義社会に深く根差した仕組みであり、今後もますます格差は広がる。
なぜこのように難しい経済書がこれだけたくさん売れたかというと、20カ国以上、過去200年前からの税金データを集めて研究し、その分析結果により①と②の結論を裏付けた点にあるのだといわれています。
トマ・ピケティ氏の主張では、資本主義は次の「r>g」という方程式の上に成り立っています。
●r = 資本収益性成長率 = 4~5%の成長
株式投資、不動産収入などの資産がお金を生み出す収益の成長率を指します。
●g = 経済成長率 = 1~2%の成長
給与所得に影響する経済の成長率を指します。
重複しますが、「r>g」という方程式では、資産を持つ人とそうでない人の格差は時間の経過とともに拡大していくことを示しています。
次に、アメリカの経済学者であるアラン・クルーガー氏が2012年に米大統領経済諮問委員会の委員長だった時に発表した「グレート・ギャッツビー・カーブ」という「所得の世代間の弾力性」と「ジニ係数(貧富の差)」を軸にしたグラフについて触れたいと思います。
このグラフは「金持ちの子は金持ちになり、貧乏人の子は貧乏人になる」、「貧富の格差は大きい」という資本主義先進国の特徴を示しています。
逆の言い方をすると「貧乏人は金持ちになれない」ということを示しており、子供に対する教育投資だけでなく、単純な資本収益性などの面において、貧しい家庭の子が努力して金持ちになることが難しいことを結論づけています。
アメリカ、イタリア、イギリス、スペインなどがこのグラフの右上に位置していますが、日本も右上方向に上昇している傾向にあります。
資本主義社会を生き抜くには
トマ・ピケティ氏の「r>g」とアラン・クルーガー氏の「グレート・ギャッツビー・カーブ」の主張をまとめると、資本主義社会においては労働から得られる給与所得だけでは効率が悪く、資本収益性のある資産を持たなければいつまでたってもお金を増やすことができないこと意味しています。
しかし、このような状況には打開策がないわけではありません。給与所得に依存しないためには、ざっと挙げただけでも次の3点がとるべき選択肢として浮かんできます。
①起業をする
②株式・FX・先物投資などをする
③不動産投資をする
②の株式・FX・先物投資は一般的に「ハイリスク・ハイリターン」といわれ、これだけで生活できるほどの収入を得るには、かなりの経験・知識が必要となります。①の起業もうまくいけば成果は大きいものの、失敗すると金銭的にかなりの打撃を受けることがあるため、「安全な資産形成」には残念ながら不向きです。そのためここでは①②は割愛させていただき、③不動産投資を掘り下げてみていきたいと思います。
まず、不動産投資とは正確には「投資」ではなく、「不動産賃貸業」という「事業経営」のことを指します。
起業と不動産賃貸業のいずれにしても、新たに事業を起こすためには貯めてきたお金を使うか、親族、投資家または金融機関などからお金を借りて事業投資を行う必要があります。そして、どちらも事業規模に応じて相応の売上と利益を得ることができるという全体的な仕組みを考えると、同じ「事業経営」といえます。
手元のお金を増やすグランドデザイン
ロジックツリーを使って手元のお金を増やしてみよう
豊かな暮らしのためには「手元のお金を増やすことが大切」というのは自明の理かと思いますが、では実際にはどうしたら手元のお金を増やせるのでしょうか。まずは次のロジックツリーの中で一番下の箱に入る言葉を考えてみてください。
答えは「支払う場所と時間を変える」です。理解しやすいように、この「支払う場所と時間を変える」をさらに「税引き前に支出する」と「税金をコントロールする」に分解してみます。
①税引き前に支出する
例えば、年収(給与所得)が600万円の場合、23%の税金が引かれるため、可処分所得(手取り年収)はだいたい460万円になります。通常はこの可処分所得から携帯電話や交通費などといった個人の支出をするわけですが、23%という税率を割り戻してみると100円の支出をするためには実は税引き前で131円の収入が必要ということになります。
このことから、税引き前に支出をする方が得であることがわかります。しかし会社員の場合は源泉徴収により会社が税金を支払い、税金を差し引いた残りが給与として個人に支払われるため、個人で税引き前に支出をすることはできません。では、会社員でも税引き前に支出をできるようにする方法はあるのでしょうか。
答えは、法人(会社)の設立、または、個人事業主として白色申告・青色申告の届け出をしてビジネスオーナーになることです。
表にもあるように、収入にかかる税金を本人が受け取る前に源泉徴収で支払われる会社員と異なり、ビジネスオーナーは収入から経費を引いた後に残った利益に対して税金を支払います。「会社員」と「ビジネスオーナー」で税金が発生するタイミングが異なるのであれば、あなたも「ビジネスオーナー」になればよいのです。会社員を続けながらでも「ビジネスオーナー」になれば、税引き前に支出をすることが可能になります。
ただし、法人を作るにしても個人事業主の届け出をするにしても、実際に何かしらの事業を行わなくてはいけません。例えば、ホームページの制作や翻訳など、特別なスキルを持っている人であれば、ある程度の営業努力を重ねることで事業として成り立つ仕事もあるでしょうが、すべての人がそのようなスキルを持っているわけではありません。
では、スキルを持ち合わせていない人には結局方法がないのか、というとそうでもありません。誰でもビジネスオーナーになることができる1つの方法は「不動産投資を始めること」です。
個人事業主がよいか、法人がよいかは別の章で細かくご説明しますが、収益物件を購入して「不動産賃貸業」のビジネスオーナーになることで、税引き前に支出をできるようになります。
もちろんビジネスオーナーだからといってどんな支出でも経費扱いにできるわけではありませんが、事業に関連する支払いであれば経費にすることは可能です。ホームページ制作をしている人であれば、映画やアニメといったDVDなども視覚的なアイディアや最新のデザイン技術を身につけるためには必要になりますし、不動産賃貸業であれば収益物件を購入するために視察で出張旅行をする必要も出てきます。
また、インターネット回線や携帯電話なども事業経営をしていくうえでは重要なツールとなるため、経費として扱うのがよいでしょう。物件の管理や視察を行ううえで車が必要であれば、法人名義で購入またはリース契約をする必要があるかもしれません。携帯電話や車のように業務だけではなく個人的な利用も含まれるものの場合には、案分して経費扱いすることで費用の半分を経費とすることもできます。
このようにビジネスオーナーになることで効率良く支出ができるようになれば、課税対象となる売り上げを抑えて支払う税金を少なくできるため、結果的に手元に残るお金を増やすことにつながります。
② 税金をコントロールする
ではもう1つの「税金をコントロールする」とはどういうことでしょうか。
給与収入は「社会保険料」、「所得税」、「住民税」の3つの税金が差引かれ、残った金額が本人に支払われます。
3つのうち、「社会保険料」については給与の額面に変更がない限り減らすことはできませんが、「所得税」と「住民税」についてはコントロールすることが可能です。
コントロールの方法としては、住宅ローンを組んで住宅ローン減税を利用し、所得税控除を受けることが一般的ですが、それ以外にも収益物件を購入して建物や設備を「減価償却」とすることでも税金を抑えることができるのです。
減価償却の仕組みや税金のコントロール方法については別の章で細かくご説明しますが、年収600万円にかかる「所得税」と「住民税」は最大で49万円になります。税金をコントロールすることで、「所得税」と「住民税」を節税できれば、その分手元に残るお金は増えます。
弊社代表 大谷誠司
経営学修士(MBA)
著書に「不動産投資を事業経営に変える!! 資産形成術」と「個人事業主と法人を上手に活かした効率経営」、発売後はAmazonや楽天の経営カテゴリーで1位になりました。
経営の個別相談・コンサルティングや講演会なども開催しています。
リスクフリーレートとお金の現在正味価値
ファイナンスでお金を考える
アカウンティング(会計)やファイナンス(財務)という言葉を耳にしたことがあるかと思いますが、その違いについて明確に答えられる人は思いのほか少ないようです。
大まかな違いは、アカウンティングは「企業の利益と過去の業績」を扱うもので、ファイナンスは「現在と将来に生み出すキャッシュ」を扱うもの、という点なのですが、本書は投資に関したものなので、このファイナンスの話について触れていきたいと思います。
ファイナンスにおいては、長期国債(10年物)はリスクがないと仮定され、その利回りの値は「リスクフリーレート」と呼ばれています。
日本の10年物国債は5年ほど前までは0.2%を下回っていましたが、現在はかつての水準を取り戻して1.8%程度あります。
でも、今は国際取引も簡単になってきたので、海外の国債を基準にしてもOKで、たとえば、アメリカの10年物国債は格付け「Aa1」で利回りは4%。日本の「A」よりも評価もリスクフリーレート(利回り)も高くなります。
例えば、リスクフリーレートである長期国債の利回りが4%で、金融機関から融資を受ける際の金利が2%であった場合、金融機関から融資を受けて、そのお金で長期国債に投資をすれば、リスクがない状態で2%の差益を得ることができます。
リスクフリーレートよりも低い金利で金融機関から融資を受けられるのであれば、そのお金を差益が出る投資で運用することがファイナンスの観点から考えた「効率的なお金の使い方」だといえるでしょう。
次に、ファイナンスの軸となる、NPV(Net Present Value)という言葉もご紹介しておきます。日本語に訳すと「現在正味価値」ですが、それでもいまいちピンとこないかと思います。
NPVとは、現在手元にある1万円が将来的に1万円以上のお金を生み出すのであれば、「現在ある1万円」の方が「将来ある1万円」よりも価値が高いということ表しています。
例えば、現在、銀行に1万円預けておけば1年後には利息分が増えるため、「現在あるお金」の方が「将来のお金」よりも価値がある、ということになります。
これらのファイナンスの考えを踏まえると、すでに住宅ローンや事業用の融資を受けており金利が「4%」を下回るのであれば、繰り上げ返済などせずに手元にあるお金を他の投資に使うのが賢明ということがわかります。
状況が良い時こそ行動を起こそう
会社員の方の場合、就業して2年ほどの在籍期間があれば融資をしてくれる金融機関の数が増えます。最近転職をした方でも、業界や職種が同じであったり年収が上がったりといった条件が揃えば、在籍期間が半年であっても金融機関が融資をしてくれる場合もあります。
また、会社経営や自営業をされている方は、確定申告書または決算書が2期連続黒字であれば融資を受けやすい状態になります。色々なものを経費扱いにして税金対策をしてしまう方も多いと思いますが、将来の投資を前提とするならば、確定申告書または決算書は黒字であることの方が望ましいといえます。
会社員でも会社経営や自営業をされている方でも、現在置かれている状況が良い時にこそ新たに事業を始めるための資金を調達したり、収益物件を購入し、将来に備えるべきです。
なぜなら、明日のことは誰にもわからないからです。
少し前までは日本の優良企業と考えられていた大手商社や家電メーカーなども、統廃合や海外企業からのM&Aにより会社としての存続が危うくなるニュースをよく見かけるようになりました。日本が成長期で市場全体が広がっていたり、大手企業に入社できて終身雇用で一生安心、という時代ではもうなくなっています。
いざ、自分がこのような悪い状況になってから動き出すのでは遅く、営んでいる事業を変えようと思ったり、会社を退職をしようと思っても家族の理解を得るのは大変困難なことでしょう。
しかし、そんな時にすでに収益物件を持っていて副収入が得られる状態であったり融資を受けて新規事業用の資金が潤沢にあるのであれば、事態は異なります。
現在自分が置かれている状況の良い時にこそ、前向きに「将来の備え」を検討してみてください。
弊社代表 大谷誠司
経営学修士(MBA)
著書に「不動産投資を事業経営に変える!! 資産形成術」と「個人事業主と法人を上手に活かした効率経営」、発売後はAmazonや楽天の経営カテゴリーで1位になりました。
経営の個別相談・コンサルティングや講演会なども開催しています。
すべての人のビジョン実現を願って
株式会社ユアビジョン
代表取締役 大谷誠司